媚薬墨汁2・俺をバカにした腹黒書道部長を雌犬堕ちさせたので、次は生意気後輩をロックオンします
書に縛られ、闇に従う。これは盲目的な恋か、それとも支配の残り香か。書道部部長・硯村雫(すずりむらしずく)の表の顔は、今日も完璧だった。乱れのない筆運び。後輩への優しく的確な指導。誰もが憧れる、揺るぎない優等生。――だが、黒墨(くろずみ)の言葉ひとつで、その日常は容易く崩壊する。知ってしまったのだ。あの圧倒的な墨の力を。彼の書に触れたあの日から、雫の奥底には消えない熱がべっとりと張り付いている。これは呪いか。それとも甘美な堕落か。罪悪感という鎖に縛られながらも、嫉妬という蜜をすすり、彼への執着はどこまでも深く沈んでいく。ポケットのスマホが震えた。『体育倉庫へ』もうすぐ次の授業が始まる。無視しなければならない。なのに、気づけば足は薄暗い廊下を進んでいた。軋む重い扉の先は、埃の匂いが充満する閉鎖空間。積まれたマットの影に身を潜めると、自身の痛いほどの鼓動が耳を打つ。扉一枚隔てた外の世界は、まばゆい光に満ちていた。体育の授業中なのだろう、後輩・筆崎(ふでさき)エミの明るい歓声が響いてくる。わずかに開いた倉庫の扉から、一筋の光が差し込む。だが、その光は決して雫を照らさない。私は被害者だったはずだ。なのに、もうすぐ加害者へと堕ちる。それでも彼の言葉が欲しい。この狂気を肯定する言い訳が欲しい。差し込む一筋の光は、暗がりに潜む黒墨の冷たい横顔だけを、残酷なほど白く浮かび上がらせていた。彼の計画は、いつだって完璧だ。外で弾けるエミの笑い声が、ひときわ大きく響く。扉一枚を隔てて――光は無邪気に躍り、闇はただ静かに従っていた。
